相続に備えるために、生きている間に対策したいというご相談でよく、「私の相続の時の為には、長男以外の兄弟には相続放棄してもらったから、すべてを長男に渡すことになっている。」と話される方がいらっしゃいます。
法律上の相続放棄は、誰かが亡くなった後でなければする事ができませんので、例えばお父さんの相続に備えて、次男が相続放棄をお父さんが生きている間にすると言う事はできません。
この場合、お父さんが亡くなった後は、お父さんの生前に相続の内容を決めていたとしても、相続人間での遺産分割協議を行い分割内容に合意をする必要がありますので、その協議の時に事前の約束で取り決めていた内容に合意されないこともあり得ます。
お父さんが生前に遺言書を作成しておけば、遺留分の問題はありますが、紛争を避けることもできたかもしれません。
また、事前の約束のとおり相続開始後に遺産分割協議書で、何も遺産をもらわないという内容の書面に実印を押していたとしても、法律的には相続放棄ではありませんので、遺産分割協議で何も相続をしないとしただけでは、仮に借金などの債務がある場合は、その債務の支払いを債権者から請求されてしまいます。
法的な意味での相続放棄とは、裁判所に対し「相続を放棄します」という申述を行いそれを裁判所が受理する事で、相続人たる地位を失う事を指します。
相続放棄をしていれば、相続人ではなくなりますので、資産を相続する事もできませんが、借金を相続してしまう事もありません。
相続は発生する前の準備をすることも可能です。自分が亡くなった後のことを準備するのは、気分のいいことではないかもしれませんが、準備することで避けられるトラブルもあるかも知れません。